鎌倉高校の何気無い日常 再び 1







   「え〜、では今年度1学期中間考査に関しましては以上です。
    詳細につきましてはお手元の教務部からの資料を御覧下さい。
    では、次の議題ですが、では、家庭科の新井先生から」


   「また、調理実習ですか」


   「はい、校長。では、新井先生、お願いします」


家庭科の新井教諭が立ち上がった。


   「3学年の調理実習についてですが」


新井教諭の説明をよそに、校長は教頭に話しかけた。


   「ま、彼女の事は有川兄弟に任せておけば大丈夫、なのだろう教頭?」


   「そうですね」


その会話を耳にした新井教諭が、青い顔で校長に言った。


   「こ、今回は……合同授業を行いません」


   「な! なんだって! どうしてだね!!」


   「そうですよ、新井先生!
    3年の調理実習は1回だけ。
    この『1回』を無難に乗り越えさえすれば、後は何の問題もないというのに、何でわざわざ!」


   「私だって出来るものなら……、合同授業それで済ませたかったですよ!」











   「有川君」


   「はい? あ、鈴木先生、何でしょう?」


   「再来週の金曜の家庭科のことで、また、お願いがあるんだけど」


   「いいですけど……、え? 再来週……ですか?
    6月の第3金曜……? ああ、その日は俺、弓道の大会でいませんよ」


   「え? え!? え〜〜!!!」


   「何か? あ、まさか調理z」


   「休めない? ねえ、その弓道の試合。有川君、君、どうしても出場しないとダメなの?」


   「無茶言わないでください。インターハイの県予選ですよ、出場するなって言うんですか?」


   「どうしても? 絶対? 何が何でも?」


   「申し訳ありませんが……」


   「あ……新井せんせぇ!!!!」


そう叫びながら、鈴木教諭は走り去った。











   「〜と言う訳なのよ。どうしよう、有川君」


   「『どうしよう』って言われてもな……」


   「この前みたいに、何か良いアイデア、無い?」


   「簡単に言ってくれるぜ。だったら自分でも考えろよ」


   「やっぱり有川おとうと君の出場を、顧問の先生に言って取り消してもr」


   「おいおい、望美助けるために、譲潰すつもりかよ」


   「ダメかな」


   「当たり前だろ、何考えてるんだよ。それでも教員かよ。ったく、手段選ばねぇんだな」


   「だってね、事態は深刻なのよ」


   「だからって、弓道一直線バカの譲から試合、取り上げんのかよ」


   「誰がバカだって、兄さん」


   「譲」
   「有川君」


   「どうせ、こんな事だろうと思ったよ」


   「何、悠長な言い方してんだ? お前のインターハイ予選出場の危機なんだぞ」


   「俺の代わりに、誰か頼めばいいじゃないか」


   「お前の代わりがそう簡単に見つかるかよ」


   「リズ先生でも、弁k……藤原さんでも、いるじゃないか」


   「譲、ちょっと来い」


   「あ! 有川君! 待ちなさい!」


そういって将臣は譲を連れて、追いかけて来る鈴木先生から逃れる為に、男子トイレに入った。


   「ああ! こら! 出て来なさいよ! 有川兄弟!」


   「す、鈴木先生……」


   「先生、男子トイレに向かって、何叫んでんの?」


   「それは、あの、……何でもありません!」







   「何でトイレに来たんだよ、兄さん」


   「ちょっと鈴Tには聞かれたくなかったんでな」


   「何だよ?」


   「鈴Tあいつには気付かれてはいないだろうが、リズ先生も弁慶もNGだ」


   「何で?」


   「去年の12月に2人とも鎌倉高校ここに来てる」


   「あ、そうか……」


   「しかもNGOだの何だのということで」


   「そうだったな…。じゃあ、どうするんだ?」


   「! ラッキー! もう1人いたぜ」


   「え? ヒノエとか?」


   「バ〜〜カ、望美とヒノエじゃ、火に油、いや火にガソリンぶち込むようなもんだ」


   「じゃあ、誰なんだよ」











   「という訳で、今回の調理実習には、特別に見学者というか聴講生というか、とにかくそう言う人が来ます」


   「聴講生??」


   「また、教育委員会のおっさんかよ?」


   「いえ、違います」


   「テレ神奈?」


   「違います」


   「やったぁ、MHK!」


   「マスコミが聴講に来るわけないでしょう。来たら嬉しいけど」


   「なんだぁ〜、がっかり」
   「???」
   「誰ですか?」


   「何でも、小さい頃から身体が弱くて転地療養をしていたそうで、
    高校、というよりも学校そのものにほとんど通った事がないんだそうです。
    で、その人に『高校』というものを経験させてあげたい、ということでこの企画が始まったそうです。
    ただ、いきなり5教科では分からないことも多いでしょうから
    家庭科とか芸術科目とか情報とかLHRとか、
    そういう楽しそうなところから見て貰おうということで」


   「主要5教科、暗に楽しく無ぇって言ってね?」


   「し! 鈴木先生に聞こえるぞ」


   「もう聞こえてます」


   「あ、ハ、ハハハ」


   「せ、先生」


   「はい、なんですか」


   「その人って、男の人ですか? 女の人ですか?」


   「『平敦紀』さんと仰るので、男性でしょうね」


   「きゃ〜男の人だって」
   「何だ、男かよ」


そんな生徒の歓声の中


   「え! 敦m…敦紀さんが?? 何で??」


と悩む春日望美であった。











10/06/10 UP

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